高齢の急性期患者に適した新病棟が誕生介護現場の人手確保に向けて外国人材を受け入れる新制度創設へ!2025年問題と管理栄養士の役割医療サービスの価格、つまり医療機関にとっての報酬は、2年に1度の診療報酬改定によって見直されています。2024年度からの診療報酬の概要が24年2月に決まりました。今回の改定で特に注目されているのが、近年増えている高齢の救急患者に対する入院医療への報酬で、新たに「地域医療包括病棟入院料」が設けられています。一般的に地域で暮らす人たちが、具合が悪くなったりケガをしたりして救急車で運ばれる際は、救急医療に対応する設備の整った医療機関に送られます。さらに入院治療が必要と判断された場合、大半は「急性期病棟」で治療を受けることになります。急性期病棟では、大勢の看護師が24時間体制で患者を看る体制を敷いており、多くは患者7人に対して看護師が1人常駐する7対1看護体制をとっています。しかし高齢の救急患者の場合、肺炎や尿路感染症など、救急医療で扱う病気のなかでは「軽症」とされるものが大半を占めます。そこで、7対1看護体制の「急性期病棟」でなくても十分対応できるのではないか、むしろ治療を受けている間に進みがちな身体機能の衰えや栄養摂取量の減退に対応できる体制を重視すべきではないかといった意見が、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会でも聞かれました。「地域包括医療病棟入院料」はそうした指摘を受けて設けられたもので、看護体制は10対1としながら、理学療法士や言語聴覚士の配置を重視しています。今後ますます増える高齢の救急患者に適した医療を提供する病棟として注目を集めています。今日、介護現場では多くの外国人材が働いています。厚生労働省によると、介護分野で働く外国人材(在留者)は4万人を超えています(2023年時点)。日本国籍をもたない外国人が日本の介護現場で働く方法は主に4つ。①在留資格「介護」、②経済連携協定に基づく外国人介護福祉士候補者(EPA)、③技能実習、④特定技能ですが、このうち「技能実習」が廃止されることになりました。技能実習は、日本で学んだ技能や知識を母国の産業振興に役立ててもらうという“技術移転”を目的としていました。介護のほか、農業や漁業、建設業、製造業など幅広い分野で利用されていましたが、厳しい労働環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害の恐れもあるとの批判が高まったことなどから、このほど技能実習を廃止し、新たな制度をつくることが決まったのです。新制度の名称は「育成就労制度」。日本の産業全般で人手不足が深刻になるなか、“人材の確保と育成”に軸足を置いたものになります。3年間で一定の技能が必要な水準に育成し、事実上、日本に永住する道も開かれます。詳細をこれから検討され、スタートは早くても来年度以降になると見られていますが、介護現場で活躍する外国人の姿を目にする機会は、これからますます増えそうです。2025年問題をご存じでしょうか? これは日本の人口の最大ボリュームゾーンである「団塊の世代」800万人全員が75歳以上の後期高齢者となる現象のことです。高齢者の多くは、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの慢性疾患を抱えています。さらに咀嚼力(そしゃくりょく)や嚥下機能が衰えて、肉をはじめとするたんぱく質を十分に食べられないケースも多々あります。筋肉の素材となるたんぱく質が十分とれなくなると筋力が低下し、身体機能も低下します。結果、外出がつらくなって家に閉じこもり、ますます身体機能が低下して寝たきりに近づいていきます。こうした人たちが増加し、病院や老人ホームがいっぱいになって受け皿がなくなってしまうことが2025年問題の根本的な原因となります。管理栄養士は病人の食べられない原因を突き止め、その原因を解決して食べられるようにし、栄養状態を改善して身体機能の回復につなげる職種です。咀嚼力や嚥下機能が衰えているのであれば、弱い力でも咀嚼でき、飲み込みやすい形態に食物を調整し、不足しているたんぱく質などをサプリメント等で補っていくためのプランを提案していくことが管理栄養士の仕事です。2025年問題を目前にした今、管理栄養士の活躍に期待が集まっています。医療・介護・福祉・栄養NEWS医療栄養介護・福祉
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