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読者体験手記
義父母の下の始末に追われる日々
時に抱いた恐ろしい感
義父の介護が終わった直後、義母の介護が始まる。
そして、トイレまわりの後始末に追われる日々は変わらない。
「嫁として当然の務め」と考えている家族の中で、誰からも感謝の気持ちや言葉はなく、
精神的に追い詰められるだけ。この思い、どこへ行き着くのか・・・。
中川 理恵子 さん  (神奈川県 59歳 仮名)
プライドが高い
義父の様子に異変


  大学教授だった義父は5年前、大切にしていた論文が盗まれたと交番に駆け込みました。警察官が巡回中で留守だったことに腹を立て、怒鳴っているところを近所の人が見つけ、教えてくれたのです。もちろん、盗まれるような論文は家にありません。

  以前から不可解な言動があったので、来る時が来たと目の前が真っ暗になったことを覚えています。帰宅した夫に病院に連れて行こうかと相談しても黙り込むだけ。

  義父母の仲は悪く、私が同居を始めた22年前から、義母は食事のテーブルも別々。ですから自分の夫なのに心配するどころか、怒鳴り声にも迷惑そうな顔をするだけ。

  義父の症状は日に日に悪化し、怒りっぽくなると同時に排泄が思うに任せなくなっていきました。夜間のトイレに失敗する回数が増え、朝一番で便座まわりの掃除をすることが私の日課に。なぜ、私だけがこんな目に遭うのか・・・。答えの出ない問いかけをしながら、びしょ濡れになった床を拭き、義父を呪いました。でも、これはその後の序章に過ぎなかったのです。

「聞きたくない」と
怒鳴るだけの夫


  ある日、お腹を下した義父が下着もパジャマも便まみれのまま、何食わぬ顔でバスルームに入り、優雅にシャワーを浴び始めました。彼が部屋に戻ったのを確認して浴室へ行くと、汚臭が漂い、排水口は詰まり、惨憺たる状態。 ジャージに着替え、3枚重ねのマスク、厚手のビニール手袋、ダイビンク用ゴーグルで装備を固めて、ようやくの思いで掃除。悪臭の地獄の中、膝から崩れ落ちるような感覚に襲われ、吐きながら涙が止まりませんでした。

  義父は、その後もたびたび便まみれ事件を起こしましたが、夫に様子を伝えても「聞きたくない」と怒鳴り、ついには出張と言って家を空ける回数が増えていきました。 携帯に電話をしても、電源を切ってしまうのでつながりません。会社に電話をかけたら帰宅直後にすごい剣幕で手を挙げられ、その後は怖くて電話ができなくなりました。

  自分の親にここまで無関心でいられる夫に背筋が冷たくなりました。 相談する人もなく、死んでしまいたいと思いながらもドラッグストアに除菌剤と消臭剤を買いに通う日々。 そんなある日、失禁しながら口をあけてソファで居眠りをしている義父の顔に、思わず濡れティッシュを被せていたのです。 また、徘徊で2時間戻ってこなかった時は、事故に遭ってくれていますようにと祈る私がいたのです。 目の前にいる人の「死」を願っていた自分にぞっとしましたが、あの時の私を否定することは今でもできません。

義父の他界直後、義母が要介護に
世話は嫁の仕事と言う夫


  その義父が心筋梗塞で突然、他界。義父の尿と便の後始末の毎日からやっと解放されたと、全身に蓄積した疲労が薄れていくのを実感し、ホッとしている私がいました。それにしても、私はいつからこんなひどい人間になってしまったのかとも。

  しかし、その直後、今度は義母が脳梗塞で倒れ、右半身にまひが残りました。 姑の介護をするのは妻の義務と言い放つ夫は、私に一言の相談もなく、在宅介護をすると決め、母のために日当たりの良いリビングを介護部屋にする大掛かりなリフォームを始めました。 義父の便の始末から解放されて、平穏な日々の幕開けに人生の望みを見出していた私には不意打ちでした。

  「もう、あなたの親の下の世話なんてごめんだわ」と宣言した私に、夫は「いやなら出ていけ。1人でお前に何ができる?」と返してきたのです。

私はこれから介護要員として
生きていくしかないのか


  家を出ると言ったものの、実行できずにいる私。退院してきた義母は、以前にも増してわがままがひどくなっていました。要介護3の義母は4点杖を使ってトイレに行くのですが、毎回失敗します。 「念のため」とおむつやポータブルトイレをすすめたヘルパーに対し、二度と来るなと罵倒していました。

  夜間はベッドで寝たままで夜間の用を足すのです。私は廊下をはさんだ部屋で寝ていますが、気配で目が覚めます。 義母の汚れた下着とベッドの始末の繰り返し・・・。こんな生活がいつまで続くのだろうか。

  夫は「姑の世話をするのは嫁の仕事」との姿勢を変えず、バトルは続いています。雨の日など、これみよがしに母が汚した下着をリビングいっぱいに干してやると、苦虫を噛みつぶした顔をしています。この親子は他人に感謝するという機能を持ち合わせていないのです。もう限界です。

  義父に抱いたあの感情が今度は義母へ向くのではないかと、時々、自分が恐ろしくなる毎日です。誰か私を助けて!

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「読者体験手記」は、『かいごの学校』(現在、休刊中)より掲載したものです。